月別アーカイブ: 2008年8月

1.5Gbps高速シリアル信号のデバッグが終わりました

 このサイトをオープンしたときにご報告した、1.5Gbps高速シリアル信号回路のデバッグが終了しました。

 残念ながら詳細な回路動作に関しては、クライアント様との守秘義務があるので話せませんが、なんとかクライアント様を満足させることができました。

 ポイントは、

  1. マイクロストリップラインのインピーダンスが50Ωからずれると、ISIの発生原因になる
  2. 波形観測時、半田付けプローブを使うことによって、波形観測の信頼性が格段に上がる

でしょうか?

 特に半田付けプローブ強力なツールとなりました。

 この場を借りて、半田付けプローブ、D350STを快く貸し出していただいた、レクロイジャパン株式会社 (現テレダイン・レクロイ・ジャパン)様に厚く御礼申し上げます。

 詳細に関しては、「デバッグ事例」の以下のエントリーを参照ください。

再製作したプリント基板のMicrostrip Lineは50オーム
半田付けプローブを使ってデバッグを行う(Part 1)
半田付けプローブを使ってデバッグを行う(Part 2)
半田付けプローブで観測した波形

半田付けプローブで観測した波形

 さて、ここまでで波形観測の準備が整いました。この回路はクライアント様との守秘義務契約があるため、詳しくは解説できませんが、いくつかの波形をピックアップして紹介します。

 以下の波形は、青いトレースのネガティブ・ゴーイングエッジを基準として、上のピンクと紫の波形の時間位置が同じかどうか確認しています。観測された波形から、時間位置がぴったり合っており、設計ミスが無かったことが確認できました。
PhaseDiff-CDRout vs SUT.jpg
 続いて、基板上でアイパターンの品質が最も問題のあるところの波形を観測してみました。とても綺麗なアイパターンです。マイクロストリップラインのインピーダンスが50オームにコントロールされた結果です。
SUT-Eye-after-mod.jpg
 続いて、750MHzのクロックエッジが、1.5Gbpsのデータをラッチするところのタイミングを観測してみました。もう少し拡大すればわかりやすかったのですが、クロックがデータのど真ん中でラッチしていることが分かります。
U6-Din Clkin.jpg
 最後に、「メタステーブル」状態が観測されるはずの所を観測してみました。見事にメタステーブル状態を捕らえていることが分かります。
U6-Din Clkin1.jpg

半田付けプローブを使ってデバッグを行う(Part 2)

 ダンピング抵抗経由でプローブを取り付けた状態が下図です。ここでは1.27mmピッチのICの差動入力端子にダンピング抵抗を半田付けして、プローブを取り付けています。 
WL400_Close_Look_1.jpg

 さらにピンピッチが0.5mmのICの差動入力端子に直接半田付けした状態が以下の図です。
WL400_Close_Look_2.jpg
 U2と書かれている部分の直ぐ右側に、半田付けプローブの先端が半田付けされているのが分かるでしょうか?

 とにかくプローブの先端を半田付けしてしまえば、あとはデジタル・オシロスコープの操作に集中でき、かつ基板が反ることもなくなります。

 とにかく基板が反ると、この基板の上に取り付けてあるチップ部品(ほとんどが1005、つまり1.0mm x 0.5mmの大きさ)が外れたり、割れたりするので、半田付けプローブは本当に助かります。

このプローブで観測した波形を次ページに掲載します。

 

半田付けプローブを使ってデバッグを行う(Part 1)

  さて、取りあえず高速信号が通過するマイクロストリップラインのインピーダンス問題には決着がつきました。
 新しく出来上がってきた基板に部品を取り付け、火入れとデバッグが本格的に始まりました。
 取りあえず火入れをするに当たって重要と思われる部分に部品を取り付けて見ました(下図)

1_5Gbps_PCB.jpg

 基板の色が黒いですが、これはレジストを付けなかった為です。通常の基板のあの緑色は、レジストの色なんですね。
 さてこの基板には、1.5Gpsbの高速シリアル信号が通ります。その信号をデジタル・オシロスコープで観測しなければなりません。私が持っているデジタル・オシロスコープ(レクロイ社 WR6200)に標準添付されているパッシブプローブでは、帯域が全く足りません。
その為、アクティブプローブを使うのですが、プローブ手に持って測定したい所に当てるのですが、基板の厚みが薄い(0.8mm)為基板がたわんでしまい、うまくプローブを当てることができません。
 これではあまりにもデバッグの効率が悪いので、かつての勤務先である、レクロイジャパン株式会社テレダイン・レクロイ・ジャパン株式会社に連絡を取って、「半田付けプローブ」を貸して頂きました。
 お借りしたのは、WaveLink Probe System D350ST」。3GHz帯域の差動プローブです。このプローブは、なんと「半田付け」ができます。そのほかにも、信号を観測したい場所にヘッダーピンを取り付けて、そこにプローブの先端を差し込むこともできます。
 プローブを基板に接続した状態を下図に示します。
WL400_OverView.jpg

シグナルインテグリティ改善

デバッグ・ラボのもっとも得意とする分野は、「シグナルインテグリティ改善」です。

 USB2.0(480Mbps)から始まった、高速シリアルインターフェース技術は、その後かつてないほどの勢いで各市場に行き渡り、かつそのスピードは5Gbpsから10Gbpsへと高速化の勢いが止まりません。
デバッグ・ラボでは、以下に挙げた高速シリアルインターフェースのデバッグの経験を生かし、皆様のお役に立ちたいと考えています。
 USB2.0(480Mbps)
USB20_wave.jpg● HD-SDI(1.485Gbps)

HD-SDI Signal Eye.jpg
● PCI Express(2.5Gbps)
PCIe_Jitter.jpg
また、これらのデバッグを効率よく行うための計測機器も自前で所持しています

日英翻訳サービス

トータル10年にも及ぶ外資系メーカーに勤務した経験から、日本語から英語への翻訳サービスを行っています。


主な実績は次の通り
1.外資系計測機器メーカーが製造する計測装置のメニューの日本語化
menu_localization.jpg2.外資系計測機器メーカーの測定器に添付されている操作マニュアルの日本語化
3.海外で出版されている本の翻訳(出版社経由)
 アナログデバイス社の「OP Amp Applications」の翻訳チーム(電子回路技術研究会)のメンバーとして、以下の本の翻訳を担当
 
OPアンプ大全 第1巻 OPアンプの歴史と回路技術の基礎知識
OPアンプ大全 第2巻OPアンプによる信号処理の応用技術
OPアンプ大全 第3巻OPアンプによるフィルタ回路の設計 (巻頭言を書いています)
 OPアンプの解説書としては、とてもよくまとまっていると思います。ご興味のある方は下記のバナーをクリックして下さい。

再製作したプリント基板のMicrostrip Lineは50オーム

 4月初旬にできあがってきたププリント基板のマイクロストリップラインのインピーダンスが指定の50Ωではなく、57Ωになっていた件ですが、再度プリント基板メーカーに以下の条件で作り直させたところ、マイクロストリップラインのインピーダンスが50Ωになってできあがってきました。

 その条件とは、
  1. メーカー曰く、プリプレグの厚みは大きく変動しないとの事であったが、接着や熱をかけてのプレスをすることから考えて、厚みはある程度変動すると考えた。そのため、プリプレグの厚み指定は前回と同じ0.2mm。
  2. マイクロストリップラインの幅は、ある程度コントロールされていて、幅の変動はほとんど無視できるとした。
  3. プリプレグの誘電率も、同じメーカーで作るのであれば変わらないと考えて、3.6を採用。
  4. 結局、前回のプリント基板では、製造段階でプリプレグの厚みが変わったと判断。マイクロストリップライン幅を0.4mmから0.5mmに変更した。
 この条件を、アジレントテクノロジー社アバゴテクノロジー社AppCADに入れたときの結果が以下の図です。
AppCad_Result.jpg
 厚みをどうしようか迷ったのですが、とりあえず0.24mmで計算しました。この時の特性インピーダンスは49.91Ωです。試しに0.25mmで計算したら51.17Ωとなり、50Ωに対してはそれほど大きく変わらないので、幅0.5mmで作成依頼をしました。
 
 その結果上がってきたプリント基板に取り付けていたテストクーポンのTDR結果が以下の写真です。
080414_NEW_PCB_TDR.jpg
 エンド部分手前のへこみが気になりますが、ちゃんと50Ωになったテストクーポンができあがってきました。これなら問題ありません。
 再度プリント基板メーカーに確認したところ、前回製作した時と製造方法も材料も、さらに層構成も全く同じとのこと。
 やはり、製造段階でプリプレグの厚みが変化したものと考えざるを得ません。理由が不明なのが残念ですが・・・
 ともあれ、マイクロストリップラインのインピーダンスの問題は片付きました。あとは動作の確認をするのみです。

サイトマップとサイト内検索

表題のように、サイトマップとサイト内検索が利用できるようになりました。

サイトマップは、「デバッグ事例」などの項目が増えると、自動的に更新されます。
まさにブログでWEBサイトを運営するメリットを最大限に生かしています。

性能の出ない回路を診断し、仕様通りに動作させます

 電子回路設計エンジニアにとって一番緊張する瞬間は、プリント基板に部品が実装されて手元に届けられ、そのプリント基板に電源を入れる瞬間ではないでしょうか?

 ちゃんと動作するのか?性能はでるのか?色々な思いが頭の中を駆けめぐることと思います。そして電源を入れてみて、まずは設計通りに動作しているか確認する作業に入ります。

 私も経験がありますが、一発で完璧に動作し、性能がでることは非常に希です。そのプリント基板を所望の性能が出るようにする作業が、「デバッグ」です。

 デバッグ・ラボは、そのような状況にあるすべてのエンジニアを応援する為に設立されました。

 代表者の國頭(くにとう)延行は、電子計測器の設計と、それら電子計測器を使って効率よく電子回路のデバッグを行うノウハウを20年以上にわたって蓄積してきました。そのノウハウの全てを使って、皆様のハードウエアデバッグを応援します。

意外な原因

 昨日発覚したISIですが、その原因は意外なものでした。 

 最初は、トランスミッターからレシーバー間のマイクロストリップラインの問題だと考えていました。というのも、マイクロストリップラインの片方が、L1からL4へ行き、さらにL1に戻るような配線になっていたからです(下図)。
Crossed_MicrostripLine.jpg
 このクロス部分でISIが発生していると思ったのです。ですので、このクロスしているパターンを切り、細い50Ωの同軸ケーブルで直結してもISIは出ています。
 さらに、クロスしていないパターンをマイクロストリップラインを切って、同軸でつないでもやはりISIが出ます。
 
 こうなると全く別の理由が考えられます。トランスミッター側の波形にISIがなくて、レシーバの入力端子でISIがでるとしたら、レシーバICの入力が怪しいです。
 
 そこで、マイクロストリップラインを元に戻し、レシーバICの入力端子をマイクロストリップラインに接続しないようにして、50Ωの終端抵抗をつけるだけにしてみました。その結果が下図。
080409-non-IC.jpg
 すごくきれいです。ISIは全くありません。なんとISIの原因は、レシーバICの入力端子に存在する寄生成分だったのです。
 
 若干言い訳をさせていただくなら、レシーバに使ったICは元々ある特定用途向けのICで、このレシーバとペアになるトランスミッタを前提にしています。しかし今回は、そのトランスミッターではないICを使ったため、このようなことが起きた可能性があります。
 
 もっとも考えられるのは、レシーバの入力端子のキャパシタンス成分です。今回プリント基板を設計するとき、その入力容量を考慮した設計をしたはずなのですが、パターンを再度見直してみると、その設計が甘かったかもしれない、と思っています。
 
 また、本来ペアになるためのトランスミッターを使っていないということもあるでしょう。
 
 いずれにせよ、イレギュラーな使い方をしているわけで、そのレシーバーメーカーに問い合わせる訳には行きません。
 
 今回の回路は、このレシーバ入力にある程度のISIがあったとしても、性能には影響がでない回路にしてあるので、おそらく問題にはならないと思います。
 
 それは今後のデバッグを慎重に行ってゆきたいと思います。