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57Ωラインを50Ωラインにする

 昨日ご報告した、マイクロストリップラインですが、ちょっと強引な方法で50Ωラインにしてみました。

再度AppCADを使って、プリプレグの厚みが0.25mmと仮定し、比誘電率も3.6のままで50Ωになるための導体厚みを計算してみました。すると導体厚みを0.035mmから0.3mmにすると50Ωになることがわかりました(下図)。

MicroStrip_0_3_thick.jpg
 そこで、テストクーポンの一部に半田を盛って厚みを増し、強引に50Ωにしてしまおう、というわけです。下図では、左の方には銅箔がむき出しになっている部分がありますが、これが本来のテストクーポンです。その右側からSMAコネクタまでのテストクーポンに半田を盛って、導体厚みを厚くしています。
 Soldered_Test_Coupne.jpg
 この状態でTDRを行ってみました。その結果が下図。
 ちょっとわかりづらいかもしれませんが、X印のマーカー部分が、半田を盛った部分で、明らかにインピーダンスが下がり、50Ωに近づいています。これに気をよくして、テストクーポン全体に半田を盛ってみました。なかなか平らに盛るのが大変でしたが、全部に半田を盛った時のTDR結果が下図。
All_Soldered_Best.jpg
 でこぼこしているのは、半田を均一に盛れなかったためで、13cmの長さのテストクーポンに均一の厚みで半田を盛るのは難しいです。むしろ思いっきり厚く盛って、後はヤスリなどで削ればもっと均一な厚みに出来るでしょう。
 
 気になるのは、このマイクロストリップラインに1.5Gbpsの信号を通したらどうなるか、です。アンリツのパルスパターンジェネレータの名機、1608Aから1.5Gbpsの疑似ランダム信号を出力させ、このテストクーポン通過後の波形を観測してみました。
 PRBS1_5G
 この信号を見る限り、ISIも出ていないようですし、アイパターンのアイも十分開いています。ただ、13cmという比較的長い伝送路なので立ち上がりがなまっていて、十分なスピードで、Hレベル、或いはLレベルまで到達していません。これは致し方ないと思います。
 
 というわけで、かなりトリッキーな方法ですが、57Ωラインを50Ωラインにすることが出来ました。さて、今回の基板は作り直しすることは決まっています。でもその時間がもったいないので、マイクロストリップラインに半田を盛る、という技を使ってデバッグしようとしている回路に問題が起きないか、検証してゆきたいと思います。
 

FR4基板上に作られたマイクロストリップラインのインピーダンス

 これからデバッグが始まるプリント基板が、土曜日に到着しました。高速シリアル信号(1.5Gbps)が通るので、基板上のマイクロストリップラインの特性インピーダンスが非常に重要です。特性インピーダンスが、信号源インピーダンス、もしくは終端抵抗(通常50Ω)に合っていないと、波形歪みなど、シグナルインテグリティを損なう結果になります。

  早々基板上に作ってあったテストクーポンを使い、TDR法を使ってインピーダンスを測定してみました。結果はなんと、「57Ω」。50Ωラインとして作成したのに、10%以上の誤差が出ています。ちょっとこれは問題です。
Actual_Line_TDR.jpg
 マイクロストリップラインの特性インピーダンス計算は、アジレントテクノロジー社アバゴテクノロジー社が無償配布している、AppCADというソフトを使っています。
 
 その時の条件は、以下の通りです。
 
誘電率:3.6
基板厚み(4層基板なので、L1・L2間のプリプレグの厚み):0.2mm
銅箔厚み:35ミクロン
 
 誘電率が低いと思われる方も多いと思いますが、昨年も同じメーカーのプリント基板を使って、同じように50Ωラインを作ったのですが、その時は上記の誘電率で全く問題ありませんでした。
 
 で、AppCADで行った計算結果は以下の通り。

MicroStripLine50Ohm.jpg
 この結果からマイクロストリップラインの幅は、0.4mmとなり、この値をメーカーに伝えてプリント基板を設計してもらったわけです。
 同じメーカーにもかかわらず、特性インピーダンスがこれほど大きくずれた理由として考えられるのは、プリプレグの厚みがコントロールされていなかった可能性があります。
 
 57Ωになる時のプリプレグの厚みをAppCADで計算してみると、0.25mmとなりました(下図)。 
 
Calculated_57_ohm.jpg
 実は今回の基板、プリント基板メーカーがちょっとしたミスをしてしまい、基板を作り直してもらうことになっています。その時はプリプレグの厚みのコントロールを厳密にやってもらうようお願いしようと思っています。
 
 再作成してもらう基板上のマイクロストリップラインのインピーダンスが、50Ωになることを祈っておきましょう。
 
 この基板を使うかどうか、は明日以降のブログをお楽しみに!