ビアのあるマイクロストリップラインの特性解析 Part 1

 アジレントテクノロジー様(現:キーサイト・テクノロジー様)ご厚意により、パーソナル電磁界シミュレータ、Genesysを使わせていただいています。

 前々から気になっていた、ビアのあるマイクロストリップラインの特性解析を、Genesysを使って行ってみました。
 
 特に、前回のデバッグの時に苦労した経験から、電磁界シミュレータで確認してみたかったのです。Sパラメータがリーズナブルな値となる条件を割り出せれば、その条件で実際のマイクロストリップラインを作成し、特性を測定してシミュレータの結果とどの程度あうか確認してみたいと思います。
 
 今回はその一回目で、取り上げるのは、層板の第1層から第4層へビア経由でつながっているマイクロストリップラインです。
 
 層構成は以下の通り。
 
第1層:銅箔(t=40um)
誘電体:FR-4(Er=4.5、t=220um、tanδ= .0004)
第2層:銅箔(t=35um)
誘電体:FR-4(Er=4.5、t=930um、tanδ= .0004)
第3層:銅箔(t=35um)
誘電体:FR-4(Er=4.5、t=220um、tanδ= .0004)
第4層:銅箔(t=40um)
 
 マイクロストリップラインの全長は40mmとし、中間の20mmにビアを打って、マイクロストリップラインが、第1層から第4層へと層が変化します。
 シミュレーション用の図面(Layout)を以下の図1に示します。
First_Model.jpg
図1 解析するマイクロストリップラインの外観図
 
 さらに、ビアの部分を拡大したものが図2です。
Close_look.jpg
図2 図1のVIA部分の拡大図
 
 シミュレーション時間を短縮するため、第1層の下には誘電体とベタグランドの第2層しかなく、その下には、第3層、第4層はありません。同様に、第4層とベタグランドの第3層の上には第2層、第1層はありません。立体的に見ると図3のようになっています。
3d_current.jpg
図3 ビア部分の立体図(アジレントテクノロジー様ご提供)
 
 さて、このレイアウトで0GHzから5GHzまでSパラメータ(S11、S21)を計算してみました。その結果が図4です。
S_Parameters.jpg
図4 図1の形状でシミュレーションした結果
 
 特に考慮をしているわけではないので、2.5GHz付近に急峻な共振点があります。この特性のまま高速の立ち上がりを持つステップ信号を通すと、立ち上がり部に約2.5GHzの周期を持ったリンギングが発生します。これを無くすことが最終目標です。
 
 で、検討を重ねた結果、最も良かった形状のSパラメータが図5です。
Best_S_Parameters.jpg
 Part 2以降は、この図5の特性になるようにどのような事をしたか、を順次紹介します。
 
Part2はこちらをクリックしてください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください